発生状況
今回は、腰ハーネス(縄パンツ、腰縄)と呼ばれる縛りを用いての横吊りの際に発生した感覚鈍麻についての事例報告です。(ご本人了承済)
感覚鈍麻部位、および体勢のイメージ
使用した縛り:
- 横吊り
- 腰(ヒップ)ハーネス片側のみ
具体的な手順として、最初に腕部の吊り縄を外し、その後、大腿部の吊り縄を外しました。最終的に、腰部の吊り縄一本で吊りを行い、そのまま降ろしました。吊りの過程で、横吊りの下側になっていた太ももの外側に感覚鈍麻が発生しました。縄が掛かっていたのは上前腸骨棘(俗に骨盤の左右の出っ張り)の下側のみで、鼠径部には縄が掛かっていませんでした。
経過
緊縛当日
特に受け手からの報告なし。
緊縛翌日
緊縛の翌日、受け手に体に違和感がないか確認したところ、太ももの外側に麻酔をしたような感覚があると報告がありました。受け手の希望により、整形外科の診察は受けず、市販薬を服用しビタミンB12を補給しました。
6日後
症状は90%回復。
16日後
症状は95%回復し、ほとんど気にならないレベルになりました。
原因
今回の感覚鈍麻は、外側大腿皮神経の圧迫が原因と推測されます。受け手自身の確認によると、外側大腿皮神経が走行していると思われる部位にティネル徴候が見られた可能性がありました。
考察
横吊りでは、下側になる部位に負担が集中します。最終的な展開で、腰部の吊り縄一本になったため、下側の腰部の縄に大きな負荷がかかりました。また、通常の外側大腿皮神経の走行よりも、受け手は下かつ外側に走行している可能性がありました。(素人によるティネル徴候の判断)
「86%においては、鼠径靭帯・ASISの下を通過し、縫工筋の内側を伴走します。」とういうデータがありましたが、その他の場合、とくにASIS(上前腸骨棘)の外側を走行するケースでは、外側大腿皮神経を絞扼しやすいことに留意したい。
再発防止策
上前腸骨棘の下部は強い場所と言われているが、一方で外側大腿皮神経の経路となっているので、過度の圧迫による損傷が起こる場所と認識しておきたい。
ガードル、コルセット、ベルト等による圧迫、肥満や妊娠、足を組む等の習慣も誘因となる。と言われる部位である。
- ショーなどの演出上必要な場合を除き、一本での降ろしなどを原則行わない
- リスクを十分に理解し、腰部の吊り縄一本に全体重が乗る状態を最短時間とする、もしくは行わない。
- 吊り経験が少ない受け手への配慮
- 横吊りの経験、外側大腿皮神経の損傷経験などをヒヤリングし、適切な判断を行なう。
- 腰ハーネスの位置確認
- 降ろす直前に確認すること。上前腸骨棘下部の縄の位置によっては、腰部の吊り縄一本で降ろす手順を行わない。
- 腰ハーネスの改変
- 上前腸骨棘下部への二巻きが上がらないように、鼠径部側にくっつける工夫を行う。または、上前腸骨棘下部に縄を入れないようにする。
- 受け手への確認とフォロー
- 感覚鈍麻など感覚異常がある場合を想定し、受け手からの申告を促す。緊縛中や緊縛直後の挙動を観察し、必要に応じてフォローする。
まとめ
今回の事例から、横吊りにおける注意点と再発防止策を確認しました。縛り手と受け手の双方が安全に緊縛を楽しむために、適切な対策を講じることが重要です。
コメント