twitterのリプライで巻き肩やストレートネックによって神経圧迫が起きやすくなるといったお話を知り、だったら「緊縛でも、神経や血管を圧迫しやすい姿勢や骨格があるのではないか?」と気になり、少し調べながら考えを整理していました。
特に、以前書いた「緊縛事故レポート 橈骨神経損傷(軽症)」について、なぜ比較的慣れている受け手で神経症状が起きたのかを考え直す中で、気になった点を書いています。

テンションだけでは説明しきれないのではないか?
以前の事故(「緊縛事故レポート 橈骨神経損傷(軽症)」)では、胸の張らせて方が強めでした。
ただ、その受け手さんは普段から吊りや後手にも慣れている方でした。 もちろん「慣れている=安全」という意味ではありませんし、神経障害は個体差も大きいと思います。
それでも、単純に「縄が強かったから」だけでは説明しきれない要素があるのではないか、と感じました。
そこで改めて当日の条件を整理すると、普段と大きく違っていた点がありました。
それが、姿勢です。
この日は、肩関節を水平伸展方向へ持っていき、さらに肩甲骨を内転させ、胸を張る方向へ姿勢を作っていました。
結果として、肩から腕にかけての形態はかなり変化します。 当然、神経や血管と縄との位置関係も変わります。
気になったのは「肋鎖間隙」での圧迫
特に気になったのは、鎖骨と第一肋骨の間にある「肋鎖間隙」です。
ここには、
- 腕神経叢
- 鎖骨下動脈
- 鎖骨下静脈
などが通っています。
後手姿勢で肩を後下方へ引き、胸を張らせることで、この部分で神経・血管束にストレスがかかることはないのか?
そこが気になりました。
もちろん、胸を張る姿勢そのものが危険という話ではありません。
ただ、骨格や姿勢特性、筋緊張、既往歴などによっては、一部の人で胸郭出口部への圧迫ストレスが増える可能性はあるのではないか、と考えています。
胸郭出口症候群との共通点
調べていく中で気になったのが、「胸郭出口症候群(Thoracic Outlet Syndrome)」です。
これは、首から腕へ向かう神経や血管が、
- 斜角筋間隙
- 肋鎖間隙
- 小胸筋下
などで圧迫され、肩こりや腕の痺れなどを起こす疾患群です。
緊縛でよく使われる後手姿勢や、鉄砲縛りのような腕を大きく開く姿勢は、一部でこれに近い状態を作る可能性があるのではないか、と感じました。
Eden testを試してみた
胸郭出口症候群には、症状誘発を確認するための徒手テストがいくつかあります。
その一つが「エデンテスト:Eden test(costoclavicular maneuver)」です。
今回、以前事故が起きた受け手さんに試したところ、脈の変化が見られました。
ただし、これはあくまで素人観察レベルであり、Eden test単独で診断できるものではありません。 また、このテスト自体も偽陽性・偽陰性があると言われています。
それでも、少なくとも「肩を後下方へ引き、胸を張る姿勢で、胸郭出口部に何らかの圧迫ストレスがかかっている可能性」は考えてよいのではないかと思いました。
double crush syndromeという考え方
さらに気になったのが、「ダブル クラッシュ シンドローム」(double crush syndrome)という考え方です。
これは簡単に言うと、
「近位で軽度圧迫された神経は、遠位での圧迫にも弱くなる可能性がある」
という仮説です。
今回のケースでは、
- 近位(肋鎖間隙部)での神経・血管ストレス
- 遠位(上腕外側)での下縄圧迫
が重なった結果、神経症状が起きやすくなっていた可能性はあるのではないか、と考えています。
もちろん、短時間の圧迫でどこまで影響するのかは不明ですし、医学的に証明できる話ではありません。
ただ、神経障害は「縄の位置だけ」で決まるものではなく、
- 姿勢
- 関節角度
- 神経の滑走性
- 筋緊張
- 血流
- 個体差
- 疲労
- 既往歴
など、複数要因が絡むのではないか、という視点は持っておきたいと感じています。
緊縛で観察したいこと
今回の件を通じて、私は「縄がどこにあるか」だけではなく、
- その姿勢で受け手の肩や胸がどう変化しているか
- 呼吸が浅くなっていないか
- 指先の色や冷感がないか
- 痺れや違和感が出ていないか
- 普段と比べて反応が違わないか
なども、もっと観察したいと思うようになりました。
また、「後手ができる」「吊り慣れている」という経験値だけで安全を判断しないことも重要だと感じています。
同じ人でも、姿勢の作り方が変わると、身体内部で起きていることは大きく変わる可能性があります。
最後に
この記事は、あくまで一縛り手としての仮説整理です。
医学的な診断や断定ではありませんし、Eden testで安全性判断ができるという話でもありません。
ただ、緊縛では「縄そのもの」だけでなく、姿勢や身体構造によっても、神経・血流ストレスが変化する可能性はあるのではないか。
そうした視点を持つことは、事故防止を考える上で無駄ではないと感じています。
なお、痺れや脱力、感覚異常などが続く場合は、当事者だけで判断せず、医療機関に相談・受診を優先してください。
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